「マミヤ!頼みがある。オレを今度のPCA21が行うダンスイベントとやらに連れて行ってくれ」
「え?・・い、いきなりどうしたの?レイ・・・」
東京秋葉原・スタジオPCAのスタッフ専用ルーム。
時刻はPM6時半。
プリキュア・オールスターズ・21(トゥエンティーワン)のメンバー達はレッスンもとっくに終わりそれぞれ帰宅した後、スタッフルームに残ってちょっとした残務処理が終わってこれからレイナと少し飲みに行こうかと話していた藤田麻美耶に突然塩沢麗が訪ねてきた。
何の用かと思えば今週の土曜日にお台場で開催されるイベントに連れていけと言うのだ。
「TOKYO GEINOフェスティバル 2015」と題する毎年行われている一大芸能イベント。
生で今をときめくアイドルや俳優、アーティストといった芸能人たちと触れ合ったり、コンサートが行われたりと芸能人好きな人間にはたまらないイベントである。
そしてこのイベントに今年はPCAのメンバー達も参戦。
このイベントでさらに知名度を上げて多くの人にプリキュア戦士のお嬢様方の活躍を知ってもらおうという社長、青野李白の思いであった。
そのレッスンやスタッフの準備も着々と進んできたころに突然のレイの訪問。
理由を聞いてみた。
「一体どういうことなの?レイ、何かイベントに出たい理由でもあった?」
「イヤ・・・マミヤ。お前へのせめてもの罪滅ぼしだ」
「・・・は?」
「え?センパイへの罪滅ぼしって・・・なんのことですか?」
マミヤだけでなく傍にいたレイナまで呆気にとられた様子で尋ねてきた。
するとレイは理由を少しずつ話し出した。
「実は・・・」
話はこうだ。
実はマミヤとレイはただの知り合いにあらず実は恋人同士。
プリキュア戦士のお嬢様方の間ではあまり公にはしていないものの、休みの日を見つけてはちょくちょくデートにも出かけたりしている仲なのだ。
そして、先日の日曜日、久しぶりに何もない休日にマミヤとレイは揃ってデートの約束をし、待ち合わせを代々木にある都立・阿部四(あべし)公園の池前に設定した。
その日のことであった。
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レイさん回想。
先に待ち合わせ場所へと着いたレイ。
腕時計を見ながら久々のデートにソワソワと落ち着かない様子であった。
(もうすぐでマミヤがやってくる。久しぶりの逢引き・・・否が応にも気が高まるわ・・・。イカン!このままでは気が高まりすぎてマミヤと会っても平静を保てるかどうか定かではない!何とかして気を落ち着けねば・・・何かないか?・・・・むっ!?)
と、そこでレイの目に留まったのは大勢のカップルがアヒルさんボートを楽しんでいる公園内の池だった。
(そうだ!この水を切り裂く鍛錬で体を動かして気を落ち着けるとしよう!ここには沢山の水がある!フフフ・・・我ながらナイスアイデアだ!)
そしてレイは人目を憚(はばか)ることなくザブザブと池の中に入るとちょうど池の真ん中の深みの方まで泳いで行った。
周りのカップルをはじめとする人々の好奇の眼差しが向けられる中、レイは一足飛びで水中から空高く飛び上がると、降下してくるタイミングで体を捻って回転させ、周りに飛び散った水飛沫、その水滴を手刀で斬り付けた。
「ヒョオォオウっ!南斗水鳥拳!」
その姿は正に水鳥の如くに優美華麗。
レイの手刀に断たれた水の雫はまるで固形物のように一瞬確かに両断されていた。
と、そこまでは予定通りだった。
しかし、次の瞬間計算外のコトが起こってしまったのだった。
「うわあっ!?」「きゃあぁぁっっ!?」 「ひええぇーっ!」 「やぁあぁ〜〜んっ」
休日のデートスポットが突如として惨劇に見舞われた。
なんとレイの手刀の威力が強すぎて水飛沫どころか周りのカップルの乗ったボートまでもがその衝撃波によってスッパリ、真っ二つになってしまったのだ。
哀れ、いきなり水の中に沈むカップル達。
「お待たせ〜vレイ、待った?なかなか服が決まらなくて・・・あら?」
やっと3分遅れで待ち合わせの場所に到着したマミヤ。
しかし、様子がおかしい。
周りのこの騒ぎは一体何だ?付近にはずぶ濡れになっている男の子や女の子たちがチラホラと見受けられた。
何か事件が起こったのか?と内心不安になりながらもレイを探すマミヤ。
しかし、すぐにボート乗り場付近で何やら偉そうな態度のハゲ老人に説教を喰らっているレイの姿を確認してしまう。
否が応でも彼がこの騒ぎに関係していることはわかってしまった。
「チミねぇ〜困るじゃないのよぉ、あのボート高かったの!アヒルさんのアレ!ソレまぁ〜スパスパやっちゃったのねぇ〜、チミコレ弁償よ弁償!お金よお金!全くなんてことしてくれちゃったりしてんのホンっト!プンプンよプンプン!」
「・・・・ふ・・・不覚。申し訳ない・・・」
どうやら会話を聞くにこの老人、ボートの所有者であり、この公園の管理人であるらしい。
ハゲ爺に言われるがままで項垂れているレイ。
結局この後話しかけてきたマミヤにも事情を説明し、今日のデートはあえなく中止。
レイはこの日のためにモデルのイベントで得た給料の5割程を叩いてボート代を弁償し、その日のデート代もなくなってしまった。
しきりに謝るレイにマミヤは「しょうがないから・・・」と笑って答え、その後仕方なしにレイナと飲みに出かけたのだった。
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回想終わり。
きっとレイはその時のことを言っているのだろう。
マミヤは微妙に顔を引きつらせつつもレイを傷つけないようにやんわりと答えた。
「べ・・別に気にしなくたっていいのよ?レイ、また都合のいい時でいいんだし・・その日は私も仕事だし、第一アナタだって撮影があるんじゃ・・」
「お前のためにその日は休日をとった!心配などしなくてもいい!」
マミヤの顔が明らかに「ええぇ〜〜〜っっ?」といった感じにさらに引いてゆく。
デートは嬉しいのだが、そこまでするほどのことか?さらに先ほども述べたように自分は仕事だというのに・・・
「せ・・センパイ、どーするんですか?レイさん引きそうにありませんよ?」
「た・・確かに・・・彼の性格上多分こういうところは諦めが悪いから・・・う〜ん、でもなぁ・・その日はウチの子たちの付き添いがあるし・・・」
そう言われて困ってしまった。
今度のその日曜日はマミヤ以外に付き添いが出来るスタッフ先生がいないのである。
レイナは兄ソウガと久しぶりに旅行に行く予定だし、ベラは京都へ研修。サクヤの方は今度のプリキュア全国ツアーのための打合せと予定が埋まってしまっている。
空くのはマミヤだけの予定だったのだ。
そんなところに降って沸いたレイのデートのお誘い。
コレは些か難しい。
「心配ない。マミヤよ」
と、そこでマミヤに後ろから声がかかった。
振り返るとそこにはケンシロウ、トキ、ラオウの北斗三兄弟が佇んでいた。
そして後ろには帰ったはずの美墨なぎさ、雪城ほのか、九条ひかり、夢原のぞみ、秋元こまち、水無月かれん、桃園ラブ、美翔舞、花咲つぼみ、来海えりか、明堂院いつき、北条響、黒川エレン、調辺アコ、そして東せつなのプリキュアメンバーたち。
さらにメップル、ミップル、ポルン、ルルン、チョッピ、シフォン、シプレ、コフレ、ポプリ、ハミィなどの妖精たちも並んでいた。
その後ろに呆れ気味の表情を浮かべた難波伐斗である。
「あ!レイさんだぁ〜v」
「ホントだ!こんにちは〜♪」
「おお、PCAのお嬢さん方、それにケンシロウ!トキにラオウも!しばらくだな」
レイの姿を見つけてさっそく声をかけたえりかと響にレイは答え、次いでケンシロウたちにも声をかけた。
「ああ、レイ。どうやら今度のイベントのことで相談があるようだな。俺が乗ろう」
「そうとも、ケンシロウの言う通りだ。強敵(とも)の悩みとあらばこのトキ、いついかなる時でも聞き入れるぞ」
「うぬが悩み!新しき時代の覇者となりしこの拳王が聞き遂げてやろうではないか!そしてその感謝ゆえにうぬが力、このラオウの為に使うがよい!」
「マミヤ、どうやらレイとのでえととやらに誘われているらしいな。安心して行って来い。プリキュアの子ども達はこの俺達三兄弟が責任を持って預かろう」
「ええ!?け・・ケンたちが?」
「オイオイ・・・マジかお前ら?」
マミヤも、そしてバットも突然のケンシロウの申し出に驚き、辟易した顔になった。
確かにマミヤにとってプリキュア戦士のお嬢様達の監視役を委任できるのはありがたい申し出である。いつもこの少女たちの面倒を見て疲れることも多々あるからだ。
しかし、ここでケンシロウ達にいきなり責任を押し付けてもいいものだろうか?
ケンシロウ達にはプリキュアのメンバー達もよくなついている。
ラオウは見た目や態度がいかついので苦手な子もいるが、ケンシロウとトキは基本とても優しく、そして時々飛び出す突飛な行動もとても面白いらしくプリキュア戦士のお嬢様方からの人気は実はスタッフの間でも高い。
しかも彼らはいつも付いているマミヤやレイナ、ベラなどと決定的に違う面がある。
叱らないのだ。
当然悪いコトをしてもハメを外しても彼らが叱るなどというコトはない。もし彼らが代わりに付き添いにつくと言われれば諸手を上げて喜ぶだろう。
マミヤはそこに一抹の不安があった。
もっともバットにしてみればこのケンシロウ達の空気の読めない行動にプリキュアの女の子たちの時々見られる悪ノリが組み合わさってしまっては収拾のつかない事態になってしまうのでは?とまたマミヤとは微妙に違うことを考えていたが・・・
「ケンシロウ・・・恩に着る!流石は我が強敵(とも)!今度是非焼肉でも奢らせてもらおう」
「強敵(とも)のために当たり前のことをしているまで!礼には及ばん」
「あ、でもケンシロウ。焼肉は連れて行ってもらおう。最近ロクなモノを食べていないせいかまた持病の吐血が・・・ゴホッゴホッ」
「ぬぅわはははははは!!ならば食べ放題の店に連れて行けいっ!この拳王がうぬら下賤の民に焼肉覇道なるものを拝ませてくれる!」
すっかりとプリキュアちゃんたちの面倒を見る気でいる北斗三兄弟。
バットなどはとうとう「いや、なぎさちゃんたちにメイワクかけそうなのはむしろアンタらなんですけど!?」と、口に出して突っ込むがそんなことどこ吹く風とばかりに話題は仕事の後の打ち上げの焼肉に飛んでいる。
焼肉と聞いて美墨なぎさも桃園ラブも北条響も「あたしもいくいくぅ〜♪」と一緒になってはしゃいでいる。
心配だ。
自分がいないことを「やった!先生いないんだ!悪いコトしても叱られない♪」ぐらいに思っているコが多いのが否が応でも伝わる。
自分という枷が、リミッターがなくなった時のこのコたちは一体どんな状況に陥ってしまうのか?
マミヤが沈痛そうに頭を抱えた時、レイが再度声をかける。
「頼むマミヤ!オレに、男としてのケジメをとらせてくれ!」
真剣な顔をして頼むレイ。
その顔を見て、マミヤはホトホト悩んでしまう。
レイのせっかくの好意を無下にはしたくないし、かと言って責任を放り棄ててこのコ達を野放しにしておくことにも不安がある。
どうしたものかと考え込んでいるそのマミヤに・・・
「大丈夫ですよ先生」
そう言った1人の少女がいた。
「先生がいなくても、ちゃんとみんなでやるべきことはキチンと考えて、ケンシロウ先生たちやバットさんの言うコトよく聞いて、迷惑かけないようにしますから」
「せつな・・・」
「せっちゃん・・・」
ハキハキと笑顔を湛えて自信たっぷりにそう言ったのはチーム・フレッシュのメンバーの1人、東せつなであった。
マミヤとバットが声を漏らすとせつなは「ねえ、みんな。みんなで頑張れば先生がいなくても大丈夫よ!ですよね?なぎさ先輩!」とメンバー達を奮い立たせるように言った。
意見を求められたなぎさもついつい焼肉の話題に盛り上がっていた自分をちょっと反省し慌てて「そ・・そうそう!大丈夫よ!あたしも・・それにほのかもいるんだし!せつなもしっかりしてるから大丈夫!」と元気よく答える。
他のメンバー達も「大丈夫よ先生!」と言いたげな顔。
その様子を見てついにマミヤがフウ、と短くタメ息を漏らしながら言った。
「わかったわ。じゃあ、先生お言葉に甘えさせてもらおうかしら?レイ、今度の日曜ね?楽しみにしてるわ」
「マミヤ、このレイ、身命を賭してその逢引き!成功させて見せる!」
「え?・・いや・・そこまで深刻に考えなくてもいいんだけど・・・」
マミヤ先生のその言葉を聞いた瞬間、夢原のぞみが「わ〜い!今度の日曜日はケンシロウ先生たちといっしょだあーっ!♪」と能天気な声を上げた。
他のメンバー達も先生がいないからちょっとハメを外せる!などと不届きな事を考えたのだろうか?心なしか嬉しそうな顔である。
しかし、すかさずマミヤは釘を刺した。
「た・だ・し!アンタたちの日曜日の態度はバットさんからキッチリ聞かせてもらうからね、もし悪いコだったときには・・・」
「わっ・・わかってるって!」 「ちゃ、ちゃんとイイコにしてるよぉう。ね?みんな」
手に息を吐きかけたマミヤ先生の凄味を込めた動作にプリキュア戦士のお嬢さん方一同、即座に顔を引きつらせて反射的にお尻を手で押さえた。
慌ててなぎさとラブがイイコにしてます宣言を発し、その場で同意を求めると、みんなウンウンと笑いながらも必死の表情でうなづいて見せた。
その様子にハア・・・とまだ不安が残りつつもようやく納得したマミヤ先生はバットに向かって
「バットくん・・・大変だろうけど、このコたちのコトお願いね?」
と言った。
「いやいや、大丈夫っスよ、コッチだって仕事なんだし。それにマミヤさんが思ってるよりこのコたちおとなしいですよ。キッチリオレがお世話させていただきますから」
「ああ、心配するな」
「いやケン、オレにしてみりゃお前の方がよっぽど心配なんだよ」
ケンシロウの自信を持った答えにハッキリとつっこむバット。
一方の子ども達、ケンシロウとトキとバットが付き添いというコトで内心ほくそ笑んでいた。
マミヤ先生達がもちろんキライな訳ではないのだが、コワイ存在であるのも純然たる事実で、やはり先生が今日はいない!というコトは彼女達にとってみれば普段できないわがままを言えたり、ちょっとしたサボリ癖や怠け癖が出てもお咎めなしというのは中々味わえない開放感なのであろう。
もっとも今しがたバットさんにしっかりと報告してくれるようにとクギを刺されたのであまりはっちゃけた勝手気まま我がままは出来ないであろうがそれでもプレッシャーは随分と減る。
歓声を上げている少女たち(特にえりか、のぞみ、ラブ、ひびきの4人)が不安で仕方なく、レイに返事をした後でも米神を抑えて「ハア・・・」と息をついているマミヤ。レイナも傍らで見ながら「このコたちは・・・」と心配そうに漏らす。
バットも心配そうに顔をしかめている。バットの場合はむしろ空気の読めない時代遅れの世紀末KY・北斗三兄弟の方が何かと不安のようだったが・・・
そんなマミヤとバット、レイナに1人のメンバーが声をかけた。
「そんな顔しないで先生、バットさん。大丈夫、みんながちゃんとお仕事こなして先生たちがこれからも安心して留守に出来るように、わたしみんなに声かけして精一杯ガンバるから」
「せつな・・・」
「せっちゃん・・」
ニコっと笑って声をかけてきたのはチーム・フレッシュのメンバーの1人、東せつなだった。
せつなの言葉に同じくしっかり者のチーム・スプラッシュスターの美翔舞が笑顔でうなづく。
その言葉に顔をマミヤ達3人の教育係スタッフは顔を見合わせ、ようやく納得したようにうなづくと笑顔でせつな達に言った。
「わかったわ。じゃあ、なぎさやほのかもいるけれど、せつな、ラブやえりかたちのことお願いね」
「ハイ!精いっぱいがんばります!」
「いきましょう!せつなさん」
せつなの言葉に舞も声を上げて反応すると、早速「なぎさせんぱーい、今度の日曜のコトちょっと話し合いましょ〜」とリーダーのなぎさを呼び止めて色々と先生たちがいない時の仕事の仕方などを決め合いだした。
浮かれていたのぞみや響、えりかもそうかとばかりに話に加わっている。
「・・・頼りになりますね。せつな」
「そうね」
「そりゃあしっかり者のせっちゃんっスからね、いやぁ〜、今時なかなかいませんよ。あんなに大人の気持ちがわかって優しいイイコ」
「クスクス・・・」
「ウフフフフ・・・イイコ・・かあ・・・」
「?なんスか?なんか間違ったこと言いました?オレ」
自分がせつなを褒めたとたんに静かな笑いがレイナとマミヤから起こり、何か間違ったこと言ったか?と怪訝そうなバット。
そんなバットにレイナが笑いながら答える。
「そっかぁ〜、バットくん知らないのよね?昔のせつなのコト・・・昔のあのコ、と言ってもつい1年くらい前のことだけど、タイヘンだったんだから」
「スゴイ不良娘だったのよ?あのコ」
「えっ!?ええぇぇっっ!?ウソぉ!?」
「今じゃ想像もつかないでしょうけどね、ホント凄かったんだから、家庭環境もあったんだけど、プリキュアになる前は付近でも超有名な不良グループのリーダーでね、それこそ警察の青少年犯罪のブラックリストのトップ10に名前が載るぐらいの。学校でも手におえない超問題児だったんだから」
「あ・・あのせっちゃんが?し、信じられねえ・・・」
あまりにも今のせつなの姿とかけ離れた話を聞かされたバットは驚き、他のメンバー達にいかに今度の日曜のイベントを先生たちがいなくても成功させるかという話を、美翔舞と一緒に提案しているメチャイイコちゃんのせっちゃんを不思議そうな表情で見つめていた。
横ではそんなバットの心を察したのか?レイナが「人って変わるものよねえ」と口に出していた。
「でも、あのせつながみんなをあれだけまとめてくれているから、今度の日曜は大丈夫だと思いますよ?それにバットくんや・・一応ケンシロウたちもいることですし」
「そうね、それじゃ、久しぶりにレイと楽しんでくることにするわ。バットくん、もし何かあったら、その時はよろしくね。どうしても手におえないようなら電話して」
「わかりました。大丈夫っスよ。ケンたちのコトも見張っておきますから、それにあれだけ子ども達同士でああやって打合せしてるワケだし、あんまり騒ぎを起こすようなこともないと思いますから」
と、大人たちもようやく大丈夫だ。という結論に達して、今日は解散となったのだった。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
ドオン!
【翔龍拳(しょうりゅうけん)!】
ドゴーン!
【ひぃゃあぁ〜んっ・・ぅゃんっ・・ゃんっ・・】
「ぬああぁっっ!?おっ・・俺様の爪つけ仮面格闘家がまたやられちまったぞぉぉ〜〜っ!!なぜだあっ!?なぜこの白い胴着着た空手家もどきの赤ハチマキ野郎に勝てねえ!武器つけてる分俺の方が強いハズだろうがぁ〜っ」
「だって僕得意なんですもん。コレ」
「やってられっか!こんなクソゲー!オイ!そこの赤ハチマキ!オレの名を言ってみろおっ!!」
「あーーっ!ヤメテジャギさん!テレビ揺すらないで壊れちゃいますってっっ」
「・・・・今日は何して遊んでんの?」
「何って、あ!オリヴィエもやる?ストレートファイター4、コレ新作のウルトラ版!面白いぞぉ〜」
「やってみたがケッコー難しいぞ、お前如きガキにできるのかぁ〜?」
さも楽しそうにテレビ画面を指さしながら答える父ともうすっかり父の相棒のような感じに落ち着いている霞邪義というオジサンの姿に藤原オリヴィエはもう何度目かの呆れ果てたタメ息をつき、無駄とはわかりつつも言葉を選んで諌めてみる。
「あのさあ・・・父さんの仕事って・・・ナニ?」
「え?決まってるじゃないか!悪の秘密結社、ワルサーシヨッカーの社長!表向きは芸能総合会社ワルサーシヨッカーだけどね」
「うん、わかった。一応社長って意識はあるわけだ。で、その社長さんは、昼過ぎから子どもが学校から帰ってくる夕方くらいまでずっと日中テレビゲームしてて務まる仕事なの?」
「だぁってね〜、やるコトないんですもんね実際、ねえジャギさん」
「おう、実際の仕事はオマエの女房のあのアナコとかいう専務がやってんだろうが?オレとオマエは毎日日がな一日のんべんだらりとココでヒマを持て余してるくらいだな」
「ね?ゲームくらいしかやることないですよね?」
「よぉ〜し!もういっちょやるぞサラマンダー!今度こそは俺様がお前の赤ハチマキをベコベコにしてくれる!」
と、さてもさてもお気楽極楽な会話が繰り広げられているここは悪の秘密結社・ワルサーシヨッカーその社長室。
今日もだらけにだらけきった社長、サラマンダー藤原はすっかり相方のような関係で定着している自称悪のカリスマ拳士・北斗三兄弟三兄のジャギさんと一緒にテレビゲームにいそしんでいた。
その様子はもうすっかりニートの姿そのもので、息子である彼、オリヴィエは父のあんまりな姿にもう何度目かの失望を感じていた。
社長の仕事ってそんなもんじゃないと思うんだけど・・・と心の中で思うも、言葉にした瞬間より一層父の行き場が無くなる気がしてそこはなんとか堪える。
しかしプリキュアを倒すという名目も今はすっかり忘れているようなので、それはそれで友達のつぼみをはじめとするPCAのみんなに迷惑がかからないからいいのかな?とオリヴィエがその状況をなんとかプラスに考え始めたそんな時だった。
「おう?そう言えばサラマンダーよ、オメエプリキュアを倒すとかいうあの目的はどうなったんだ?」
「・・・あ!そうでしたそうでした!いや、すっかり忘れてましたよ!」
オリヴィエは内心「あっ!・・ちぇっ!こんな時に冴えやがってあのヘルメットオヤジ」と思った。
なんとあろうことかプリキュアの話題をいつもあまりプリキュアに干渉してこないジャギからふってきたのだ。
ジャギの助言ですっかりプリキュア打倒のことを思い出したサラマンダー藤原は、突然社長室にある社内専用の連絡用電話を取り、ナンバーを押すと受話器に向かって「あーもしもし?私だ。すぐに彼を呼んでくれたまえ」と話した。
それだけ伝えるとガチャリと受話器を置き、フッフッフ・・と怪しい笑いをする。
「今度の相手は手強いぞぉ〜プリキュア戦士のお嬢様方。なんたって女の子のニガテなものが相手だからねぇ〜クックック・・」
「なんだサラマンダー?女子の苦手なものが相手なんて、そんな気の利いたヤツがいるのか?」
「ええ、もうそろそろ来るはずですよ」
含み笑いをしながらジャギにそう得意気に語るサラマンダー、自信満々のその様子にオリヴィエも一体誰が来るのか?と少し緊張した表情で父の様子を伺っていた。
そうこうしている時だった、
コンコン・・
と社長室のドアがノックされる音が響いた。
一斉に一同ドアの方へと振り返る。
「お!早速やってきたなぁ〜、ハーイ、どうぞぉ入りなさい」
「どーも、ウザイナー部門の泥尾光央(どろおみつお)、コードネーム・ドロドロンで〜す」
「お〜よく来てくれたなドロドロンくん!」
「なんだ?女子のニガテなものってコイツか?サラマンダー」
「そうなんです!このドロドロンくんです!ほら、男の子と違って女子って泥遊びとかキライでしょ?彼はもう名前からドロドロですからね!その名前だけできゃ〜〜やめて〜〜っとかなっちゃうこと間違いなしですよ!」
「ほほう、そうなのか?」
「・・・いや、単純すぎだろ」
さも単純すぎる安易な理由に辟易とした感想を述べるオリヴィエだが、そんな息子の意見ももはや耳に入らない。
サラマンダーは入り口に現れた、まるで蜘蛛の足のような特徴的な頭髪をした大柄の男を見るや、笑顔で出迎えその大きな手を握って声をかけた。
ドロドロンと呼ばれた大男はキョロキョロと部屋を見回して、ジャギを見かけた途端、サラマンダーに向かって答えた。
「あれあれあれぇ〜?ソコにいるのはダレ?社長さんの知り合い?見たことないヒトだなぁ〜」
「ほほう!コゾオ、俺の名が気になるか?いいだろう、俺の名を言ってみろォ!」
「え〜わかんないよー、知らないヒトだなぁー」
「フッフッフ・・・そうかぁ、知りたいかぁ?知りたいよなぁ?ならば仕方ねえ教えてやろう俺は北斗神拳の伝承者!じゃ・・」
「ああ、紹介するねドロドロンくん、コチラ、私の新しいパートナーの霞邪義さん。面白い人なんだよぉ〜、仲良くしてあげてね」
「へえー、そうなんだぁ社長さんのトモダチぃ〜、ヨロシクねぇ〜」
「・・・いや・・・サラマンダー・・・そのさあ、今さあ・・俺から名乗ろうとさあ・・カッコイイところだったのに・・・」
「さてさてドロドロンくん、実はキミに仕事をやってもらいたいんだけどいいかなぁ?」
サラマンダーはキメゼリフを横から邪魔されて意気消沈しているジャギさんには見向きもせずにドロドロンの顔を正面から見据えてエッホンと咳払いをしながら話しはじめた。
ドロドロンもジャギを無視して社長に返事をする。
「知ってるよー、プリキュアのコトでしょ?ボクにまかせておいてよ社長さん。ボクがあのコたちをやっつけて2度とワルサーシヨッカーの邪魔をしないように言って聞かせてくるからね」
「頼もしいなドロドロンくん!では早速とりかかりたまえ!上手く行けばボーナスでるからねvあっ、でも失敗したら罰ゲームね〜♪」
「りょーか〜い♪じゃ、行ってくるね社長さん!それと・・え〜と・・」
「おお!俺の名を忘れたか不届き者があ!しかしまあよかろう、俺の名を言ってみろォ!そうかぁ〜俺のこの七つの傷を見ても誰だかわからねえか?仕方ねえ教えてやろう俺は北斗神拳の伝承者・・・」
「ああ、コチラはジャギさんですよジャギさん。また今度一緒にあそんであげてね」
「オッケーわかったよんvじゃ、行ってくるねぇ〜」
「ジャギ・・・あの・・まって・・ねえ・・」
そう言い残すとまたしても名乗り遅れてしまったジャギさんを尻目にドロドロンくん、爽やかに社長室を後にしてしまった。
「・・・オイ、サラマンダー」
「ハイ?なんでしょう?」
「俺の名を言ってみろォ!!」
「え?ジャギさんじゃないんですか?」
「いや・・そうなんだけどね・・・そうじゃなくてさ・・だから、なんて言うかさあ・・・その・・もうちょっとさ・・・俺ソコは素直に名乗るんじゃなくて・・・」
「・・・・ハア・・・・・え〜?アナタのお名前なんて知りません。なんていうんですか?聞かせてください」
「よォし!よく言ったコゾオ!そうかぁ?知りてえかぁ?この胸の七つの傷を見ても誰だかわからねえのかぁ?もう1度チャンスをやろう。俺の名を言ってみろぉ!」
「えー?7つの傷?アナタはまさかケンシロウさん?」
「俺はウソが大嫌えなんだあぁあぁ!!俺は北斗神拳の伝承者ジャギさまだあぁあぁーーーっっ!!」
「・・・満足?」
「・・・ウン」
「コレやりたかったんでしょ?オジサン」
「ウンそうなの」
と、オリヴィエが子どもに言い聞かせるようにジャギに語り掛ける。
どうやら一連のこの流れをやりたかったがためにジャギはドロドロンくんにもサラマンダー社長にもしつこく絡んでいたらしいが、ココで自分よりはるかに年下の藤原オリヴィエからやりたかった小芝居の一部始終を投げかけてもらったことでようやく納得し、いい年こいたオッサンのクセに中学生の子どもに宥めすかされている。
オリヴィエは思った。
父さんはなんでこの人連れてきたんだろう?と。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「ハイ!それじゃ本番まであと30分でーす。PCA21のみなさん5分前にはスタンバイお願いしまーす!」
『は〜〜〜い!♪』
時間は流れて今日はTOKYO GEINO フェスティバル 2015.
所はお台場特設イベントホール。
PCA21の面々が集まる控え室に係員のスタッフの声が響き渡った。
今日は待ちに待った一大芸能イベント。
一流芸能人への登竜門とされるこの祭典にPCA21も出演。ダンスイベントとしてチーム・マックスハートからチーム・スイートまでのすべてのプリキュア達が歌とダンスを披露する特別コンサートが催される。
いつもと同じ、いや、いつもよりさらにより一層高まる興奮と緊張感。それをメンバー誰もが感じ取っていた。
ただ1つ気がかりなのは今回はなんと教育係スタッフの先生達が軒並み不在だということだ。
一応世話係やスタイリストなどは同行しているものの、彼女らをある意味で抑えておくべき抑止力を行使できる先生方がいないのである。
ベラは京都へ研修、サクヤはプリキュア全国ツアーの打合せ、レイナは久々に休暇で家族旅行。
マミヤが代表で休日出勤付き合うことになっていたのだが、先日恋人であるモデルのレイさんから強引にデートのお誘いがあり、プリキュアの子ども達の強い勧め(?)もあって今回は休暇をとっている。
そう。
アイドル・プリキュア戦士のお嬢様たちがもう1つはっちゃけている面はココである。
コワイコワイ教育係の先生達がいないのだから今日は少しくらいハメを外せる!
代わりに付き添いで来ているのは優しいお兄さんスタッフのバットさんと、いつでもどこでも面白い北斗三兄弟のおじさまたち。
自分たちが叱られることはほとんどない。
ましてお尻を叩かれることなんてゼッタイにありえない!
まああんまりハメを外して度の過ぎたオイタをすると先生達報告がいって後日大目玉を喰らうハメになるであろうからそこの辺りは注意は必要だが、その開放感からか?とくにプリキュア戦士の中でもお転婆で問題児とされる少女たちの心は躍っていた。
「ねーねーvノゾミール!あと本番まで30分あるってぇ〜なんかしてよっか?」
「え〜?でもえりかちゃーん、せんせーたちいつも15分前にはスタンバイしてなさいって言ってるから、時間ないんじゃない?」
「もぉーっせっかくセンセーたちがいないのになぁにマジメやっちゃってんのさぁー?ね!ね!ね!ね!ちょっとだけゲームしよゲーム!ほら!ラブも、ひびきもやろやろ!」
「え〜?いいのかなぁ〜?」
「いいじゃんいいじゃん!♪ここでやんなきゃ女がすたるってもんよ!ねえ?いいでしょバットさぁ〜ん」
「う・・うぅ〜ん・・まあ、本番に差支えないようにな」
「いぃっやったぁ〜〜♪ホラホラ!みんなもみんなも!なっちゃんセンパイも!うららもアコもおいでよぉーvv」
「えぇ〜?・・じゃ、じゃあちょっとだけ・・・w」
「ったく・・単純なんだから・・・アタシ、※「どーもり」しかやんないから」
【※「どーなつのもり」若い世代の女の子に人気沸騰中のゲーム。森の木になぜかなっているたくさんのドーナツを手に入れて自分のスイーツ屋さんをつくるという平和かつ自由度の高いゲーム。 JIN−AI−DO・3RSで人気)仁愛堂(じんあいどう)・スリー・ラショウ。】
と、早速問題児の1人、来海えりかの誘惑に乗せられた子達が本番前、集中力を整える大事な局面で先生達に御法度とされているゲームで遊び出した。
えりかと似たような思考回路ののぞみや響などはウキウキだし、普段ツンデレで他のメンバーと必要以上につるもうとしないアコまでもが先生達がいないこの状況を楽しんでゲームに興じていた。
バットが(あ・・コレってちょっとヤバイんじゃ・・・)と思い、憚りながらも声をかけようとしたその時、同じプリキュアメンバーの1人からその集団に一喝があった。
「ハイ!ソコ!それまで!もうすぐ本番なんだから衣装整えたりして準備しましょう!」
声のする方を見ると、手を叩きながら東せつながそのゲームで遊んでいる一団を窘めていた。
「せっちゃん・・・」
「えぇ〜〜?なんでぇ〜せつなぁ〜」 「せっかくセンセーたちがいないチャンスなのにぃ〜、一緒にせつなちゃんも遊ぼうよぉ〜」 「空気ぶち壊しじゃ〜ん」
ラブやのぞみ、響などはブーブーとせつなに不満を漏らしたが、そこで年長者の彼女も声を上げた。
「こういう時こそしっかりしないと・・・先生たちだっていないんだから・・・」
「センセーたちがいないからチャンスなんじゃん〜〜〜っ!いいでしょ別にぃ〜〜っ!」
「ダメだってば!そんなコトじゃイベントも失敗しちゃうわよ。ホラ、ラブ!のぞみちゃんも!」
「う・・うん・・・でもぉ〜・・」
「もっと遊びたいよぉ〜〜ねぇ〜〜っせっちゃぁん、いいでしょぉ〜〜・・・」
せつなが必死に説得するも、自分勝手な思考が強いえりかやのぞみなどは中々承知してくれず、困ってしまった。
そんな時だった。
「そうね、せつなの言う通りよ!ホラホラみんな準備して!」
美墨なぎさが号令をかける。雪城ほのかや月影ゆりも数人のゲーム機を取り上げ、待ってましたとばかりにスタイリストスタッフがメンバーの身支度の最終チェックをする。
「ぶぅ〜〜っなっちゃんセンパイだって楽しそうだったのにぃ〜〜っっ」
「せつなのマネなんかしちゃってさぁ〜〜っ」
なぎさもいつもならばもしかしたらえりかの誘惑に乗せられたかもしれないが、仮にもリーダーとしての矜持がある。
それに年下のせつなに先を越されたことで自分自身がしっかりしなきゃ!という思いが新たにされたのかもしれない。
「ゴメンねせつな。あとはアタシとかほのかとかにまかせて、自分の準備しちゃいなさい。ホラホラ、ひびきぃ〜、アンタブローチ忘れてる!」
なぎさにそう声をかけられたせつなは、笑顔で返しながらも、どこかさみしそうな表情だった。
「ホッ、オレの出る幕でもなかったか・・・頼りになるぜ、なっちゃん」
「ホントよねぇ〜、でも、今日はせっちゃん、よくみんなをまとめようとガンバってくれてるわねぇ〜、助かるんじゃない?」
「っておわっ!?リンちゃんいつの間に!?」
「え?いまさっき来たとこ。アタシもこのイベント参加するし」
と、いきなりバットの横に現れたのは冨永鈴だ。
相も変わらず神出鬼没なコだ。とバットは思った。
せつなはその間にもスタッフに入念に出番を確認したり、ステージの下見をしたりとまるでマネージャーがやるようなことまでやっている。
このイベントでメンバー達が失敗しないようにみんなのことをお願いとマミヤたちに頼まれたからだろうか?並々ならぬ頑張りを感じた。
「本番5分前で〜す!よろしくお願いしま〜す!」
「よーし!じゃあみんな頑張って行くぞーっ!ホラ!アシスタント三人衆!嬢ちゃんたちに水配って水!」
いよいよ本番が近付いたところでバットが控えていたケンシロウ、トキ、ラオウの3人を呼びつける。
ラオウは相も変わらず妙に偉そうで「この拳王に水を持って来させようなどとは不届きな!ならばうぬが行けいバットぉ!」とのたまったが、バットが間髪入れずに「ああそう。じゃ、バイト代いらねえのな」というと「おのれぇい!この拳王にもまだ涙が残っておったわぁ〜っ」と涙ながらにメンバーに大急ぎで水を持ってきた。
若干のドタバタはあったものの、イベントは無事開幕。
「それでぇは!只今より!TOKYO GEINOフェスティバル 2015を開催いたしまぁーーす!」
大御所ゲスト司会者。マッスル・千葉が意気揚々と開会を宣言。
ギャラリーのテンションも上がりに上がり、ファッションショーに始まり、短編映画放映、クイズ大会、スポーツ一発挑戦グランプリ、新人芸人のお笑いショーなどなど数々のプログラムが消化されていく。
PCA21の出番はこの後、「今をときめく売れっ子アイドル大集合!歌え!踊れ!歌謡祭り2015」というプログラムに出演する。
ちなみに蒼野美希はファッションショー、美墨なぎさ月影ゆりは映画、水無月かれん、雪城ほのか、南野奏はクイズ大会、夏木りん、北条響はスポーツ挑戦、夢原のぞみはお笑いショーの審査員などそれぞれのプログラムにも一部のメンバーが出演している。
バットの見ている限り、失敗もなく、今のところ安定してみんなお仕事をこなしている。
「このままいけばどうやらマミヤさんたちには悪い報告はしなくて済みそうだな」
バットは内心、また彼女たちがお尻を叩かれて泣き喚く声が聞こえてしまうのか?と心配していたものだがこの分ならそれは取り越し苦労になりそうだと胸を撫で下ろした。
しかし・・・・
「アタタタタタタタタタタ!ホワッタァっ!・・北斗!骨膚片付拳(ほくと・こっぷかたづけけん)!」
ぴしっ ぱりーん! ぱりぱりぱりぱりぱりーん
「ぬあっ!まただ・・・どうしてもついクセでコップを片付けようとしても一度に持とうとすると反射的に拳を繰り出してしまう・・・まさかコレは!?骨膚我割手持手居拳(こっぷがわれてもっていけん)かあぁ!?」
「こっ・・困りますってラオウさん!」 「ココは動物立ち入り禁止ですよぉ!馬は入れないで下さい!」
「馬ではない。黒王だ。黒王はダメとは書いてなかった」
「いやそのヘリクツなんですか!?取りあえず馬外に出してください!」
「馬ではない!黒王だ」
「おやおや、あのコたちタオルを放りっぱなしで・・・ハハ、しようのないコたちだ」
「あ、トキさんいいですよ。それ僕らがやりますから」
「いやいや、仕事をしている身としてはこれくらい当然の・・・ゴホッゴホッ・・・グハアッッ!」
「吐血ぅーーーっ!!??」 「ああっ!!タオルに血がっ!血ぃぃーーーっっ」
「オレにはぜっっったいにあのコたちよりコイツらの方が問題アリアリだと思うんだが・・・」
後片付けをしようとしてさらに仕事を増やしているドタバタKY三兄弟に今日もタメ息の止まないバットだった。
『ミ〜ラ〜ク〜ル〜みんなくるぅ〜♪ 見事にしゅう・ごう! プリキュアぁ!』
『プリキュア!キュ・ア♪!プ・リ・キュ・ア!♪ 大集合!♪v』
『うおおおぉぉーーーーっっっ』 『プリキュアさいこぉおぉおーーーっっ!』 『オレのヨメになってくれええぇえーーーーっっ』
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「ハイ、それじゃ一旦休憩入りまーす!お疲れさまでーす!」
『お疲れ様でしたぁーーーっっ!』 『お疲れ様でぇ〜すっ♪』
やっと一通りのプログラムを終え、ここから先はフィナーレを残すのみとなった。
コンサートまで完璧にこなしたPCAの女の子たちをバットが拍手で迎えた。
「お疲れさまぁ〜vいやよかったよかった!最高のステージだったじゃないかぁ!みんなよく頑張ったね」
「ありがとうございます!バットさん!」 「バットさんにそう言ってもらえるとアタシたちもガンバってよかったって思えます!」 「今日も絶好調ナリーーっ!」 「でた!咲の絶好調ナリ!」
バットの言葉にほのかやりん、咲やなぎさが嬉しそうに答える。
先生のいない中、実は開放感があるようで不安も同じくらいあったのだ。
いつもは先生達の見守る中で知らず知らずの内に感じている安心感。それが今日はなかった。
バットも頼りになるとはいえ、やはりいつも感じている教育係の先生達の持つ雰囲気とは当然のことながら違って感じる。
そんな中、この一大イベントでの出番が大成功に終わったことは彼女たちが確実に成長している何よりの証拠だった。
マミヤやレイナには逆に良い報告材料ができたとバットもホクホク顔である。
仮にも今日はマミヤやレイナ、ベラやサクヤの代わりに世話役の代理として来ているのだ。そんな時に問題でも起ころうものならば自分の監督不行き届きの責任にもなり兼ねない。
気苦労はケンシロウたちのコトだけで十分だ。
取り分け今回はなぎさやほのか、ゆりたちは勿論のこと、この子のおかげで無事にイベントを終えることが出来た。
「お疲れさん!せっちゃん!ハイ、ジュースとドーナツv」
「あ!バットさん、おつかれさまです♪今日はありがとうございました」
「コッチのセリフだよせっちゃん、キミがみんなをまとめてくれたからハメを外す子も出なかったし、ちゃんとダンスイベントもこなすことができたんだ。ケンたちだってキミらのダンス見て盛り上がってたんだぜ。特にラオウ!」
「え?ラオウのおじさまが?」
「ああ、いっつもあんな偉そうな態度で誰にでも高圧的にワケわかんねえコト言ってるケド、キミらのダンス見てアイツ涙ボロボロに泣いてたんだからよ。この拳王にもまだナミダが残っておったわぁ〜・・とかいつものセリフ言って」
そんなコトを言いながらバットはチーム・フレッシュの東せつなをねぎらった。
汗を拭きながら、せつなは受け取ったドリンクを飲みながら笑顔でバットの話を聞いている。
ラブや響も勿論、普段は結構イタズラ好きで1度遊びたい!と言い出したら聞かないえりかも今日はせつなの言うことをキチンと聞いてくれて、それにつられたのか輪を乱そうとする子も出てこず、イベントは非常に円滑に進んだ。
先生にした約束を取りあえずは守ることが出来た。
あとは最後のフィナーレだけ。
もう成功したも同然だった。
そう思うと安心したのか?
彼女の中で知らず知らずの内にたまっていた心的ストレスがどっと疲労感となって襲ってきた。
「?どうした?せっちゃん、何か具合でも悪いか?フィナーレの式にはまだ1時間くらい時間あるから少し寝とくか?」
「い・・いえ、大丈夫です。すみません。ちょっと1人にしてもらってもいいですか?」
そういうせつなにバットも今までの張りつめていた緊張が解けたので1人になって落ち着きたいのだろう。と二つ返事で承諾した。
「さってと、じゃあオレはケンたちも手伝わせてみんなに差し入れ届けてくるかな」と言いながら出て行ったバットを見送ったせつなはみんながいる控え室ではなく、今は仕事に出払って無人になっているスタッフルームへと入り、ソファに腰を下ろしてタメ息をついた。
「ふぅ・・・なぎささんやほのかさんのおかげでどうにかなったわね。ちょっと張りつめすぎちゃったかな?さすがに疲れちゃった・・・」
なんとなく手持無沙汰になってスタッフルームを見回す。
自分達を普段裏方で支えてくれるスタッフの人達の小道具や私物が乱雑に置かれていて不思議な新鮮さを感じる。
(わたしたち以外の人も結構タイヘンなんだなぁ・・・・あ・・・)
と、そこでせつなはあるモノを見つけた。
「コレ・・・バットさんの?」
それは、緊張の糸が解けてしまった彼女を誘惑のドツボに嵌らせるにはこれ以上ないモノだった。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「たっ・・タイヘンだあぁーーーっっ!フィナーレの準備をしてたら・・すっ・・ステージに化け物がっっ!!」
そう大慌てで叫びながらプリキュアオールスターズの控え室に飛び込んできたのは、お台場の今回のイベントスタッフの1人だった。
少女たちの顔色が変わる。
「バケモノ・・って、やっぱり・・ほのか!」
「間違いないわ、ワルサーシヨッカーよ!みんな!行くわよ!」
即座にそう言ってみんなを鼓舞して現場に急行するよう呼びかけるのはリーダー格のチーム・マックスハートの美墨なぎさと雪城ほのかだった。
センパイたちの声掛けにその場にいた全員が『ハイ!』と反応する。ただ1人バットだけが
「ええぇぇえぇ〜〜〜〜っっっ??またバケモノぉ〜〜!!??今日は何にも事件起こらなくてラッキー・・とか思ってた矢先にコンチクショウ!ふざけんじゃねえっ!!」
とヤケ気味にキレていたが・・・
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「きゃあぁーーーっっ」 「うわあっっ・・なんだなんだあ!?あのドデカイ化け物は!?」 「なんかのアトラクションかあっ!?」 「事件か事件!?」
「ど〜も〜、悪の秘密結社のドロドロンでーす。今からぁ〜プリキュアおびき寄せるために暴れちゃうからぁカンケーない人は巻き添えにならないように離れててね〜」
「ウザイナァ〜ッ!」と叫び声を上げる緑茶の体色をした巨大な化け物を率いているのは一般客に扮して帽子にジャケットを装備していたドロドロンくんである。
周囲は好奇の思いで野次馬になる者、恐怖で逃げ出す者と様々である。
と、ソコに颯爽とステージ横から登場したのはPCA21のメンバー達であった。
「まちなさい!」
「そこまでよ!アナタたちの好きにはさせないっ!」
「おおっ!?PCAだ!」 「プリキュアが来たぞぉ〜っ・・ってことはやっぱりショーかなんかか!?」 「サプライズショーだな!いいぞいいぞぉ〜っ!」 「なぎさちゃ〜〜んvvカッコイイぞぉ〜〜っ!」 「ほのちゃんオレも蹴ってくれぇ〜〜い♪ww」
登場した瞬間あからさまにオタクの野次馬様達がドっと増えたような気がするが、そんなコトは気に留めることもなく、なぎさ、ほのか、そしてゆりなど年上のリーダーたちを中心としてプリキュアメンバー達が今日は全員勢ぞろいして並ぶ。
それを意気揚々とウザイナーと迎え撃つドロドロンくん。
「あ、現れたねプリキュアー、なんか知らないけどウチの社長さんの邪魔ばかりしてるみたいじゃないか。ダメなんだよ?オトナにコドモが逆らっちゃ、ココでおにーさんがちょっと懲らしめてあげるから、もう2度と邪魔しないように!」
「何言ってんのよ!?」
「世界征服とか狙って悪いコトしてんのはソッチでしょ!?」
「大体世界征服とかはやんないって言ってんのよ!バカじゃないの?」
「今時時代遅れすぎるし!」
「脳ミソホントにイカレてんでしょアンタら!」
「ローカル!ジジイ!」
「・・・・くるみさん・・・ろーかるって・・なんですか?」
とドロドロンくんに負けず劣らず乗ってしまってやいのやいのと言い返してしまうのは、えりか、ラブ、美希、りん、エレン、くるみとそしてひかりだった。
ただし、ひかりだけはくるみの発言したローカルという単語の意味がわからなくて聞き返しただけだったが・・・
そのうっかり発言に周りのギャラリーから「なんだぁ〜?」 「そーゆー設定なの!?」という声も上がったことでゆりが「あなた達黙ってなさい!」と厳しく叱責するハメとなってしまった。
「周りの人達も盛り上がって来ちゃったし、じゃあそろそろ戦おっか?いっくぞ〜ウザイナー!」
「ウザイナ〜〜っ!」
「みんな!変身よ!」
『ハイ!!』
「またヘンシンかよぉおおーーーーっっ!!?」
もはやバットの痛烈な叫びも虚しく響き渡るだけ。
何も事件が起こらないように起こらないようにとただひたすらに願っていたが、どうやら自分は本格的に運に見放されているらしい・・・。
「メップル、いくわよ!」
「りょーかいメポ!」
「ミップル。出番よ!」
「わかったミポ!」
「ポルン、ルルン、お願い」
「まかせるポポ!」「ひかりがんばるルル!」
「「デュアル・オーロラウェイブ!」」
「ルミナス・シャイニングストリーム!」
「フラッピ!準備OK?」
「いつでもOKラピ!」
「チョッピ、ガンバって!」
「舞もがんばるチョピ!」
「「デュアル・スピリチュアルパワー!」」
『プリキュア・メタモルフォーゼ!』
「スカイローズ・トランスレイト!」
『チェインジ・プリキュア!ビートアーップ!』
「シプレ、お願いします!」
「コフレ!頼んだわよっ!」
「ポプリ、力を貸してっ!」
『プリキュアのタネ、いくですぅ〜っっ!』
『プリキュア・オープン・マイハート!』
『レッツプレイ!プリキュア・モジュレーション!』
プリキュアの少女たちがそれぞれヘンシンアイテムを掲げて眩い光に包まれ、そして変身を遂げる。
あっという間に光の中から色とりどりのコスチュームに身を包んだプリキュア戦士のお嬢様たちがステージ上に並んだ。
「光の使者、キュアブラック!」
「光の使者、キュアホワイト!」
「輝く命、シャイニールミナス!」
「輝く金の花、キュアブルーム!」
「煌めく銀の翼、キュアイーグレット!」
「大いなる希望の力、キュアドリーム!」
「情熱の赤い炎、キュアルージュ!」
「はじけるレモンの香り、キュアレモネード!」
「安らぎの緑の大地、キュアミント!」
「知性の青き泉、キュアアクア!」
「青い薔薇は秘密のしるし、ミルキィローズ!」
「ピンクのハートは愛あるしるし、もぎたてフレッシュ!キュアピーチ!」
「ブルーのハートは希望のしるし、摘みたてフレッシュ!キュアベリー!」
「イエローハートは祈りのしるし、とれたてフレッシュ!キュアパイン!」
「真っ赤なハートはしあわせのあかし、うれたてフレッシュ!キュアパッション!」
「大地に咲く、一輪の花、キュアブロッサム!」
「海風に揺れる一輪の花、キュアマリン!」
「陽の光浴びる一輪の花、キュアサンシャイン!」
「月光に冴える一輪の花、キュアムーンライト!」
「爪弾くは荒ぶるしらべ、キュアメロディ!」
「爪弾くはたおやかなしらべ、キュアリズム!」
「爪弾くは魂のしらべ、キュアビート!」
「爪弾くは女神のしらべ、キュアミューズ!」
『プリキュア・オールスターズ・トゥエンティーワン!ただいま参上!!』
「いくわよみんな!」
「コッチだって、行くぞぉウザイナー!」
「ウザイナぁ〜っ」
「やかましいっ!オマエがウザイわっ!!」
プリキュアちゃんたちに吐けない感情ストレスを目の前の化け物に吐露するバット。
ショーとすっかり勘違いしている観客に見守られながらPCA21とワルサーシヨッカー、ドロドロンの戦いがはじまった。
「たあっ!」 「とおっ!」
「やあっ!」 「えいっ!」
まずはチーム・マックスハートとチーム・スプラッシュスターの4人がそれぞれ化け物にパンチやキックを浴びせかけ、それをルミナスが後方からアイテムからの光で補助する。
怯むことなく腕を振り回してきたウザイナーに今度はチーム・ファイブが得意技を叩きつける。
「プリキュア・シューティングスター!」
「プリキュア・ファイヤーストライク!」
「プリキュア・プリズムチェーン!」
「プリキュア・エメラルドソーサー!」
「プリキュア・サファイアアロー!」
「ミルキィローズ・ブリザード!」
攻撃魔法の波状攻撃、ウザイナーを襲うかと思ったその時だったが、コレはドロドロンが「残念でしたぁ〜vオレ!」と腕から蜘蛛の糸のようなモノを繰り出してそれらを絡めとる。
「はっはっはっは!ボクの技、びっくりした?したでしょぉ〜?キミたちの攻撃なんて効かないんだよーん」
「ううぅ〜〜っっ!なにようっ!ムカつくぅ〜」
「バカ!ドリーム!むくれてるヒマがあったら動きなさいっ!」
相変わらずのドリームとルージュの夫婦漫才の隙をつこうとウザイナーが襲い掛かる。
「よぉ〜し、やっちゃえウザイナー!」
意気揚々とウザイナーを使役するドロドロンくん。
周りの他のメンバー達も攻撃を阻止しようとするが、このウザイナーとドロドロンのコンビが中々に強い。
飛びこんで行っても跳ね飛ばされてしまい、ミルキィローズやキュアビートなどがステージ上に叩きつけられる。
「あうっ!」 「きゃあっっ!」
「フフン!そこでおとなしくしててね〜」
「つっ・・強い・・」
「どうしよう?」
「なんだ情けないぞうぬら?この拳王の部下であるならあのような輩さっさと片付けてしまえい」
「え?」
跳ね飛ばされたミルキィローズとビートの上からそんな声がかかった。
驚いてみてみるとなんとラオウとそしてケンシロウ、トキ、北斗三兄弟がステージ上なのにその場に勢ぞろいしていたからだ。
バットも驚いてそちらを見る。
「あれ!?アイツらいつの間に!?」
「ラオウのオジサン!?」
「ケンシロウ先生たちまで・・・どうしたんですか?危ないから下がっててください!」
「あれあれあれぇ〜?だれぇ?キミたち」
「このコたちの関係者だ。これ以上彼女達に狼藉を働くことは許さん!」
「ち、ちょっと!この人たちは無関係です!手をだすのはやめてくださいっ!」
キュアホワイトがドロドロンの前に立ちはだかってそう言ったが、当のドロドロンはケンシロウの発言によってケンカを売られたと思ったのか?
「許さん!・・だなんてなんかナマイキだなぁ〜、ムカついたからアンタたちも一緒にやっつけちゃおうっ!いくよウザイナー!」
「ウザイナーーっ」
と今度は標的をケンシロウ達に定めて襲い掛かってきた。しかし、プリキュア戦士たちが慌てる中、当の北斗三兄弟は逆にドロドロンの発言に怒りを露わにし、こう言って立ち向かった。
「おのれ・・ムカついたなどと理不尽な理由で暴力に狂おうとは・・・貴様には地獄すら生ぬるい!」
「悪党め、苦しまずに死を与えてやろう」
「この拳王に楯突いたこと、死をもってその愚かしさを償えいっ!」
「北斗百裂拳!アタタタタタタタタタタタタタタタっ!」
「北斗!天翔百裂拳!」
「北斗剛掌波!!」
ドオンッ!!という轟音。
北斗三兄弟の北斗神拳が炸裂。
ウザイナーとドロドロンくんはそのまま三人の技の威力に弾き飛ばされ、錐揉みしてステージ上空へと吹き飛んだ。
「え?え!?ええぇ〜〜〜〜?なにこの人たち強い人だったのねぇ〜〜」
「ウザイナぁ〜〜〜っっ」
「こんなトコで北斗神拳キタあぁぁーーーーっっ!!」
ドロドロンくんとウザイナーの悲鳴にあわせてバットの痛烈な叫びも入り混じる。
ウザイナーとドロドロンはそのままステージ上にドドーン!と叩きつけられ、身動きがとれなくなった。
すかさず、そのウザイナーに今度はチーム・フレッシュの4人が飛び掛かった。
『プリキュア・クアトラプル・キィーック!!』
「ウザイナぁ〜〜っっ!」
今度はウザイナーが隙をつかれ、そのまま再度地べたに激突。
ソコにチーム・ハートキャッチの魔法が炸裂する。
「プリキュア・ピンクフォルテウェイブ!」
「プリキュア・ブルーフォルテウェーイブ!」
「プリキュア・ゴールドフォルテバースト!」
「プリキュア・シルバーフォルテウェイブ!」
今度は命中。
魔法の波状攻撃でウザイナーがダメージを受け、さらに動きが停止する。
「メロディ!」
「OK!リズム!」
「ミューズ!」
「いいわよビート!」
すかさずそのウザイナーをダメ押しとばかりにチーム・スイートの面々が四肢をそれぞれ押さえつけて行動不能にする。
「あ!マズイかも・・・」
ドロドロンくんが慌てる様子を見て取ったキュアブラックがそばにちょうどいたピーチとパッションに声をかける。
「よし!ラブ!せつな!最後はアンタたちのチームプレイで決めちゃいなさい!」
「なっちゃんセンパイ」
「なぎさセンパイ・・ハイ!ラブ!美希!ブッキー!」
「OKせつな!」
「うん、みんなでやろう!」
「クローバーボックスよ、わたしたちに、力をかしてっ!プリキュア・フォーメーション!」
ラブの声掛けでそれぞれがクラウチングスタートダッシュのようなスタイルをとる。
そこから再びラブの合図によって一気に化け物まで駆け込む。
「READY・GO!」
「ハピネスリーフ、セット!・・パイン!」
「プラスワン!フレアーリーフ!・・ベリー!」
「プラスワン!エスポワールリーフ!・・ピーチ!」
「プラスワン!ラブリーリーフ!」
チーム・フレッシュのメンバーそれぞれがクローバーの葉のような光を形成し、それがやがて4人の手に渡ると四つ葉のクローバーのようなモノを形作る。
そして最後はそれがどんどんと巨大化していき、ベースの様な物へと変化。
葉の部分に4人がそれぞれ立ち、まるでサークルのように化け物を取り囲む。そして最後、合体魔法の光がウザイナーを包み込んだ。
『ラッキークローバー・グランドフィナーレ!』
「ウザァイナアァ〜〜〜っっ」
光に包まれたウザイナー。
シュワシュワと音を立てながら光の中へと消えて行ってしまった。
「あーあ、やられちゃった。しょーがない、ティッシュ配りがんばるか・・・」
あっさりとしつつもどこかさみしそうな顔をしてドロドロンくんはその場から立ち去って行った。
「ふぅ・・・」
「なんとかやっつけた・・・」
ラブとせつながタメ息をついたその途端だった。
『わあああぁぁーーーーーっっっ』 『ヒューヒューーっっ!♪』 『うおおおぉぉーーーーっっっ』
会場にまき起こる割れんばかりの大歓声。
「よかったぞぉ〜〜っっ!」 「ゲリラショー最高―――っっ♪♪!!」 「みんなよかったぞぉ〜〜っっ!」 「PCAやっぱサイコおぉーーーっっ!!」
オタクのファン様を筆頭に今の戦いをショーだと勘違いしている客からPCA21のメンバー全員に惜しみない拍手が送られる。
その様子に照れ笑いのメンバー達。
バットも予想外の出来事は起こったが、とりあえず大事に至らなくてよかった。と胸を撫で下ろし、意外にもこの事件がゲリラショーとして自分の会社の手柄となれば・・・とほくそ笑んでいた。
と、そんなステージ上のメンバー達に観客席からある人物が駆け上がってきた。
「みんなっ!大丈夫?」
『マミヤ先生っ!!』
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「先生どうしてココに?」
PCA21控え室。
なんとかワルサーシヨッカーの刺客、ドロドロン君を撃退したメンバー達だったが、ステージ上がメチャクチャになってしまい、現在スタッフ総動員で片付けが行われている。
フィナーレの式典は急遽1時間後に延期され、PCAメンバーはそのまま控え室で待機という形になった。
メンバー達はその控え室で突然ステージに上がってきた人物が今日はお休みでレイさんとデート中のハズのマミヤ先生だったのに驚き、話を聞いていた。
「レイにね、ちょっと近くまで来たからついでに様子でも見てきたらどうか?って言われてね。心配で見に来ちゃったの。でも、みんなよくやったわね!ちゃんと問題も起こさずイイコでお仕事もちゃんとできて・・・先生嬉しいわよ」
マミヤ先生にそう言われて照れつつもとても嬉しそうなプリキュア戦士のお嬢様方。
「レイもありがとう、気を使ってもらっちゃって。助かったわ」
「ああ、どうということはない。気にするな」
「レイ、マミヤとはうまく行っているようだな」
「おお、ケンシロウ。お前のおかげだ。礼を言う、今度是非食事でも奢らせてくれ」
「強敵(とも)の頼みだ。何程のことはない。しかし食事の誘いは嬉しい」
「そうだな。我ら三兄弟、常に食費のコトで四苦八苦しておる」
「肉だレイよ肉!それでなければうどんかはたまた焼き鳥かおでん!それ以外はこの拳王が認めぬぞぉぉっ」
と、あちらで何やら騒いでいるKY連中をほったらかしにして、バットはマミヤに今日の事を簡単に報告した。
「と、言うわけで、途中例のワケわからん会社から妨害があったものの、彼女達ちゃんと力を合わせて見事撃退しましたし、イベントの出番もコンサートもバッチリ、マミヤさんが心配するようなこと起きなかったっスよ」
「そう、バットくんありがとう。今日は助かったわ。今度何かご馳走させて」
「いやいいんスよコッチは給料もらえるんだから。それより何事もなく終わって本当によかったっスよ」
「大変なコト起こった方が面白いけどねv」
「いや、リンちゃん。そんな無責任な・・・」
「何事もなくだと?本当にそうか?」
そんな声がPCA21の入り口から聞こえた。
見ると入り口には長い黒髪が美しい美女とその傍らに金髪の長髪が特徴的な眼つきの鋭い男が立っていた。
「ち、ちょっとちょっとアンタ、何者ですか?ココは関係者以外立ち入り禁止で・・・」
「フン、下郎め。しゃしゃり出て来るな、コレで口を噤んでいろ」
と言って金髪の男は対応に出てきた男性スタッフに名詞とともに多額の札束を渡した。
「おわっ!スゴイ金・・・アンタ一体・・ん?・・サザンクロスプロモーション・・って、あの業界大手の!?」
「ってことはこの人が噂のっ」 「サザンクロスの若きキング、古川真(ふるかわしん)社長!?」
「しばらくだなキサマら」
「ケン、お疲れ様v」
「おおっユリアか。元気そうでなにより」
「あぁ〜ら、またでたのね年増のヒト。腰痛とか大丈夫ですかぁ〜?」
「あらぁ、気づかいありがとうvでもご心配なく、美容体操で健康そのものですから。美容の美の字も知らないガキンチョに言っても理解できないでしょうけど♪」
現れたのはサザンクロスプロモーションの社長、シンと売れっ子女優の山本ユリアだった。相変わらずリンと顔を合わせると独特の舌戦と火花が飛び散る。
しかし、いつもならばケンシロウとユリアが挨拶を交わすだけでも憤然として咎めるシンだが、この日はそんなそぶりを見せるでもなく、部屋の中へと入ってきた。
シンはツカツカとバットとマミヤの元へ近づくといつも通り傲慢にこう言い放った。
「小僧、キサマ今なんとぬかした?問題なく終わっただと?」
「え?・・ええ、そうですけど・・・なにか?」
「フン!たわけめ!もはや自分のところの不祥事も気づいてないとは恐れいったわ」
「なっ・・なんスかそれ!なんにも問題なかったですよ!大体アンタいきなり出てきて失礼で・・」
「待ってバットくん・・・一体どういうコトでしょう?何かウチのコたちが今日不祥事でも犯したとおっしゃるんですか?」
熱くなって反論しようとしたバットをマミヤが片手で制し、落ち着き払ってシンに問いかける。
シンはそんなマミヤをフンと鼻で笑うと、一箱のタバコを胸ポケットから取り出した。
「・・・これに見覚えはないか?」
「・・・タバコ?」
「あっ!オレのタバコ!」
「バットくんの?」
マミヤの問いかけにバットはうなづきながら答える。
「ええ、ソレ、俺が今日一服用に持ってきたヤツです・・・そう言えばさっきから見なくって、おかしいな〜って探してたんですけど・・・どこにあったんスか?ソレ」
「ユリアの楽屋だ。吸殻が絨毯の上に落ちて焦げ付いていてな。あわやボヤ騒動になっていたかもしれん」
「ええっ!?じっ・・ジョーダンやめてくださいよ!俺ぁそんなトコで吸った覚えないですよ!大体オレはユリアさんの楽屋がどこかも知らなくて・・・」
「誰もキサマだとは言っていない。キサマのタバコを盗んでユリアの楽屋で一服したヤツめがこの中にいると言っているのだ」
そう言ってシンはぐるりとPCA21のメンバー達を見回した。
その様子を見てマミヤが慌ててシンに意見する。
「ち、ちょっと!まさかウチのコたちを疑ってるんですか!?いい加減にしてください!名誉棄損で訴えますよ!」
「そう思いたい気持ちはわからんでもないが、現実とは残酷なモノだぞぉ〜?なあ?ソコの小娘!」
そう言い放ちながらシンが指差したのは・・・・
「!・・・え!?・・・せつな?」
「ウソ!?せつなが!?」
「せつなちゃん!?」
シンが指差しているのが東せつなだということが理解できるとラブ、美希、祈里とチーム・フレッシュのメンバーたちが一様に彼女の方を振り向く。
対するせつな、その顔面は蒼白になって小刻みにガタガタ震えていた。
「そ・・・・んなバカな!せっちゃんに限ってそんなコトするワケ・・・なんか証拠でもあるんスか?」
「クククク・・・我がサザンクロスプロモーションのセキュリティシステムを舐めるなよ?ユリアの部屋にはどんな事件も見逃さぬようありとあらゆる個所に監視カメラがついておるわ!スペード!クラブ!ダイヤ!ハート!出でよ!」
『お呼びですかキング!ヒャッハァーー!』
と、シンがドアの外に向かって呼びかけるといきなり現れたのは、メンバーの中でゆりだけ見覚えのある、いかつい独特のファッションとメイクを施した4人の大柄な男たちだった。
男たちは何やら茶封筒に入った紙を取り出すと、それをシンに渡した。
「コレがその証拠VTRを焼いたものだ。キサマらで確認してみるがいい」
シンは偉そうに一同を睨み付けると写真をパン、と床にバラ撒いた。
その写真をマミヤとバットが拾い上げて食い入るように見つめる。
そこには間違いなく、せつなとそっくりの顔、衣装を着た女の子がユリアの控え室から出て来る様子が撮影されていたのだ。
マミヤは写真から眼を離すと、せつなの方を見つめる。
見るとすっかり青ざめた顔色のせつなが、項垂れて小さくなっていた。
「せつな・・・コレは?ホントにアナタなの?」
「・・・・・・」
「せつな」
「せっちゃん・・・」
「あの・・・ゴメンナサイ・・・それ、わたしです・・・」
マミヤの目の前が一瞬暗くなった。
米神に手を当てる。
普通のイタズラやハメを外した行動、遅刻や居眠りなどの失敗ならば年頃の女の子であるからある程度はつきものだ。仕方ない。
だが、今回のこの事件は大きく捉えるならば非行行為である。あわや火事になったかもしれない程の大事件。
信じられなかった。信じたくなかった。
だが、本人から自白が聞かれた今、疑うべくもない。
マミヤはシンに向き直って、深々と頭を下げた。
「申し訳ありません!ウチの娘がとんだ不祥事を!」
「謝ってすむ問題かぁ?未成年の喫煙となればキサマらの今後の活動にも大きく響こう。ん〜〜さてどうするかなぁ〜?」
シンはジロリと周りを見渡してからそしてユリアを見て声高に言った。
「ユリアよ!これから先ケンシロウに会うために五車プロモーションに近づくことはしないとココで誓え!」
「ええ!?」
「なにぃ!?」
「シン!キサマ!」
「それでは我らもユリアと会えぬではないかぁーっ!」
シンの突然の言葉にユリアとケンシロウだけでなく、トキやラオウまでもが鬼気迫る表情でシンに食って掛かる。
「ケンシロウに会うために五車プロモーションのスタジオに行くのが楽しみだったのに・・・そんなっ・・できません!」
「ほぉ〜う?いいのか?オレが今回のこのプリキュアの小娘どもの不祥事を暴露してしまえば五車プロモーションにとってはかなりの損失!PCA21の人気も地に落ち、ケンシロウ達の職も無くなるかもしれんぞぉ?いいのか?ヤツを無職のドン底に叩き落としても?」
「シン!キサマは相も変わらず悪逆非道のマネを!お前に今日を生きる資格はない!」
ケンシロウがシンに向かって得意の北斗神拳を繰り出そうと構えた。だが、いつもならシンも拳法で反撃しようとするが、ココでシンはポケットから何やら紙を取り出してケンシロウ、ラオウ、トキ、三兄弟の前にばら撒いた。
「む!?コレは?」
「それは今日キサマらが仕事中に損壊したお台場内の備品の数々だ。占めて合計で8万5千円。先ほどオレが立て替えてやった・・が、もしこれ以上楯突くというのならその代金は全て自分で何とかすることだな。ケンシロウ!グラス損壊合計3万2千円!ラオウ!馬乗り入れの際、糞尿垂れ流しによる清掃費4万3千円!トキ!吐血によるタオル汚染損失代1万円!・・・払うか?キサマら」
「ぬぅぐわああぁ〜〜〜〜〜っっっしまったああぁあーーーーっっまっ、またしてもぉぉーーーっっ」
「これはシンの究極奥義!修理費用請求拳(しゅうりひようせいきゅうけん)!!」
「またしてもカネの力かあぁあっ!!?この拳王にもまだナミダが残っておったわあぁ〜〜〜」
「っっだああぁあーーーっっホンっっっっっト!!使えねえテメエらっっ!!!」
自分達が損壊した備品の負担を肩代わりされていては貧乏金無し三兄弟、もはやグウの音も出ず、結局シンにそのコトで反論することもできなくなってしまった。
あまりの情けなさと自業自得さ加減にバットもついにキレて大声で三兄弟を恫喝した。その様子に満足そうに笑うとシンは再びユリアを見る。
「さあ、どうするユリア?ケンシロウとプリキュア達を助けたいのではないか?」
「で・・でも・・・」
流石にこう出られるとユリアもなすすべがない。しかしケンシロウやプリキュアの女の子たちとお話しすることが目下彼女にとって最高の息抜きでもある。それが奪われるのもかなり辛いことだった。
しかし、そんな彼女を今回救ったのは、愛するケンシロウではなかった。
「おのれシン!そのような卑劣な手でマミヤとプリキュアの少女たちを苦しめようとは許せぬ奴!この俺が成敗してくれる!」
「んん?ほう、誰かと思えばお前は南斗水鳥拳(なんとすいちょうけん)のレイではないか。面白い?キサマが相手か?我が南斗孤鷲拳(なんとこしゅうけん)とキサマの水鳥拳、どちらが勝っているか確かめてやろう」
「望むところだ来い!」
と、あれよあれよとワケも分からぬ内に2人の間で決闘がはじまってしまった。
呆気にとられる周囲の空気を読むことなど当然せず、シンとレイが交錯する。
「喰らえ!南斗凄気網波(なんとせいきもうは)!」
「死ねい!南斗千首龍撃(なんとせんしゅりゅうげき)!」
目にも止まらぬ手刀と手刀の乱れ撃ち合い。その余波が四方八方に飛び、控室を切り裂き、貫き、散々に破壊する。
「わあああぁーーーーっっ!?ばっ・・バカ!!こんなトコでいきなり拳法使って大喧嘩」
「きゃああぁあぁっっ!」 「こっ・・コワイよぉお〜〜っっ」 「おかーさぁーーんっっ」 「ふえぇえっっ・・ママあぁ〜〜たすけてぇ〜〜っっ」
慌てて地面に伏せて泣きながら助けを求めるプリキュア戦士のお嬢様方、最早局地的な災害である。
「ちっ、ちょっとレイ!やめて!このコたちにまで危険が及ぶじゃない!」
マミヤがレイに向かって闘いをやめるよう求めたが彼の耳には入っていない。
このままでは冗談抜きで流れ弾でPCAの子ども達がケガをしてしまうかもしれない。
ここは自分が決死の覚悟をもって体を張って彼をとめるか?マミヤがそう思いレイに向かって駆け出そうとした時だった。
「嗚呼・・・また漢たちが私をめぐって、血で血を洗う骨肉の争いをっ・・・そんなっそんなの、耐えられない!」
「ぬっ!?待て!ユリア!どこへ行くつもりだ!」
突然ユリアは駆け出すと部屋を出て反対側にあった会議室へと駆け込んだ。
そして窓を開けるとそこから身を乗り出し、追ってきたシンやレイ、北斗三兄弟やマミヤたちを見てこう言った。
「今すぐ闘いをヤメテ!でないとココから身を投げます!」
(また身投げ脅迫キタああぁぁーーーーーーーーーーーーっっっ!!!)
命を懸けたユリア得意の交渉術にバットは心の中で激しく突っ込んだ。
すると、シンやケンシロウたちが途端にオロオロとし出す。
「ユリア!危ない!すぐに戻ってくるんだ!」
「ユリア!待て!わかった!わかったから!そのまま動くんじゃないぞ!なんでも言うコト聞くから早まるな!!」
途端に闘いなど忘れてユリアに言いなりのシン。
「・・・今回のコト、せつなちゃんのやったコトは不問にしてくれますか?」
「あ、ああ!不問にするする!キレイさっぱり忘れるとしよう!」
「では公表もしませんね?」
「しない!しないしないぜぇぇったいしない!あっ!そうだ!オイお前ら!その写真破っちゃえ!ビリビリにしろビリビリに!」
『お任せ下さいキング!ヒャッハアァーーーッッ!』
「ケンシロウ達の損壊した備品の代金も、そのまま立て替えてくれますか?」
「少し癪だが・・・まあ仕方ない!わかった!金は俺が払おう、どーせ俺にとってははした金だ!」
「スタジオPCAにまた行ってもいいですか?」
「し・・仕事に支障が出ん範囲でなら・・・許そう!」
「お休みとお給料をさらに増やしてくれますか?」
「ああ!わかった!何とかしよう!」
「秋葉原のゲームセンターにあるクレーンゲーム限定のシフォンちゃんのぬいぐるみをとってきてくれますか?」
「わかった!シフォンちゃんだな?シフォンちゃん!よし!早速取りに行こう!」
「新しいお洋服を買ってくれますか?」
「お安い御用だ!すぐに買いに行こう!」
「今日のディナーはフレンチじゃなくて新宿西口の【らあめん修羅の国】のバリ堅とんこつ醤油ラーメンを食べさせてくれますか?」
「わかった!一緒に行こう!仕事が終わったらすぐに行こう!僕も実は食べたかったのラーメン!オイ、お前ら!修羅の国に予約だ!」
『お任せ下さいキング!ヒャッハアァーーーッッ!』
(そしてなんかまた小刻みに色々条件要求飲ませてきたあぁぁーーーーっっ!!)
このあまりのちゃっかりさ加減にバットもユリアも完璧に舌を巻いてしまった。
ユリア。
流石は芸能界を売れっ子として歩む女優である。ただでは起きない。
しかし、ユリアのおかげでこの不祥事は何とか外に漏れず、シンが内々に処理してくれることとなった。
そして、最後のフィナーレも無事に行われ、PCA21のイベントは大成功裏に終了したのだった。
五車プロモーション・スタジオPCAへと帰ってきて、みんなが打ち上げへと出かけた後の、誰もいなくなったその休憩室でであった。
1人居残りさせられた東せつなちゃんは、ベッドの上に腰かけたマミヤ先生の正面に立たされ、当然というべきであろうが、恐怖の時間を味わうハメになっていた。
「・・・・・・」
「どうして居残りさせられたか・・・わかってるわよね?せつな」
「・・ハ・・・イ・・・」
すっかり怯えている様子のせつな。
顔色は真っ青で、ガタガタと震えていて、目はもう涙目になりそうだった。
しかし、いつもなら可哀想と思ってしまうような様子も、今日の不祥事を考慮に入れれば全く同情に値しなかった。
まずはマミヤも落ち着きながら状況を説明させようと問い尋ねる。
「まず、ユリアさんの楽屋に無断で入るなんて、芸能人としてあるまじき行いよ。でも、まあそれは今のところよしとして・・・・どうしてタバコなんかに手を出したの?それもバットさんのモノを。人のものを勝手に盗っちゃいけないなんて小さい子でもわかる道理よね?」
「それは・・・その・・・あのっ・・」
しどろもどろで何か言おうとしても言葉が出てこないせつな。
するとマミヤは声の調子を変えて、落ち着いた様子で優しく聞いた。
「・・・せつな。せつなは普段そんなコトするようなコじゃないでしょ?何があったの?」
そこまで聞かれて、はじめてせつなは目からポロポロと涙を落として、少しずつ告白した。
「・・・・つかれ・・ちゃった・・んです」
「?・・どういうこと?」
「今日、先生達がいなくて・・マミヤ先生もいなくて・・・でも、久しぶりのデートだし、楽しんできてもらいたくて、今日付き添いいらないって言ったけど・・いざ、仕事がはじまると・・やっぱり不安で・・でも自分が言った手前、みんなのコトしっかり引っ張って、イベント何が何でも成功させようって自分でキメたのに・・なのに・・やっぱりなぎさセンパイやほのかさんや、ゆりさんみたいにはいかなくて・・・みんなはしゃいじゃうこともあって・・・そのたび精一杯ガンバってみたんだけど、あんまりうまくいかなくて・・・結局なぎさセンパイとかに助けてもらって・・」
取りつかれたように次から次へと話すせつな。
その必死の表情をマミヤは静かに、冷静に見つめながらゆっくりと聞いてあげた。
「知らないうちにムカムカして・・疲れてきちゃって・・ついスタッフルームに入ったら・・・バットさんのバッグからタバコが見えて・・・その・・あのぉ・・懐かしく・・なっちゃって・・つい・・」
ああそうか、とマミヤは思った。
やはり今日このコたちを残してデートに行ったのは失敗だったのかもしれない。知らず知らずのうちにこの子はストレスが溜まってしまったのだ。
そしてつい、以前のクセでタバコに手を出したくなってしまった。
ストレスが溜まるほどみんなのコトをまとめようと頑張っていたのだ。自分との約束を果たそうと、頑張りすぎてしまった。
考えてみればイイコになったものだ。
本当に、せつなはついちょっと前からは考えられないほどイイコになった。
もともと東せつなは、付近の警察の少年課でも常にブラックリストに載っていた不良グループ、「螺美凛棲」(ラビリンス)のリーダーだった。
親に対する反抗からじぶんのせつなという名前を捨て、「イース」と名乗った。
何とメンバーのトップは今五車プロモーションで同じお抱えのアイドルグループ、新鮮組のメンバーである東隼(ひがしはやと)と東瞬(ひがししゅん)だというのだからコレも驚きである。
兄2人を彼女は顎で使っていたのだ。
両親は多忙な人で父は警備管理会社、「ラビリンスセキュリティ」の社長、東メビウス。母はベテラン女優の北那由多(きたなゆた)という人だった。
子ども達に愛情はあるものの仕事が忙しく、中々かまってあげることが出来なかった。
そのコトでつい放任主義になり、甘やかし放題。
裕福な家であったが心は満たされずついにせつなが反発。
不良グループのリーダーへとなってしまった。
実に若干12歳、小学校6年生の頃である。
長兄隼は腕っ節がスバ抜けて強く、少々単純ではあったが喧嘩においては無敵で誰も敵わなかった。
対して次兄瞬は兄に及ばないまでも喧嘩は強く、何より知略に秀でており、様々な策謀を巡らせて色々な悪事を働いた。
しかし、せつなは不良としてそれらの兄ほど特別な能力を有しているワケではなかった。
並の女子よりはもちろんケンカは強かったが、長兄ほど腕っ節が強かったワケではなく、策略も次兄ほど狡猾ではなかった。
ただ、彼女には人を惹きつけ、従わせてしまう並々ならぬカリスマ性と、危険を察知する天性のカンがあった。
彼女の指示があったからこそラビリンスは長いコト警察を撒き捕まるコトもなかった。
チームで一番年下であったが、一番の権力を持ち、高校生メンバーですら頭を垂れて従順に従っていた。
喫煙、サボリ、夜遊びなどの非行行為などはいうに及ばず。
暴走、喧嘩、器物破損、未成年に対する酒類の譲渡、万引き、恐喝。
殺人、強姦、薬物乱用以外の大体の悪事に手を染めており、少年課でも悩みのタネであった。
しかし、1年ほど前、ついにその約1年に及ぶ無法行為にピリオドが撃たれた。
警視庁第4課、暴力団特別対策本部刑事であり、阿部視署(あべししょ)の署長でもある大塚鷲(おおつかしゅう)によってメンバー全員が捉えられ、チームは解散となった。
兄2人は1週間拘置所に拘留されたのち、両親の手続きによって釈放。
リーダーのせつなはまだ中学1年だった。
その時の生徒指導部長がマミヤだったのだ。
生意気で、マミヤ相手にもひるむことなく散々に暴言を吐き、隠し持っていた特殊警棒で乱暴を試みたが、まったく通用せず。
反省の見られなかった態度に怒ったマミヤは、そのまま警察署内でせつなのお尻を散々に懲らしめ、ついに大号泣しながら「ゴメンナサイ」と言わせ、反省させたのだった。
その後、芸能人である母が五車プロモーションの社長リハクと親交があったために、東家の3兄妹は更生とともに新鮮組、プリキュアオールスターズへとそれぞれメンバー入りし、親との距離を少しずつ取り戻す目的でまだ幼かったせつなだけが、唯一仲の良かった桃園ラブの自宅へ下宿する形で収束を見たのだった。
すっかり更生してくれて、今では手もかからないPCAの中でもしっかり者で安心できる存在となっていたために油断していた。
このコもまだまだ脆いところがたくさんあるのだ。
そのコトをちゃんと理解してあげるべきだった。
マミヤはゆっくりとせつなを抱き寄せると、そのまま髪を優しく撫で、小さな子どもをあやすように背中をトントンと叩いた。
「!・・・?・・あ・・あの、先生?」
「つらかったわね・・・せつな。よく頑張ったのね、先生のために、頑張りすぎちゃったのね?でも、そんなに背負い込まなくていいのよ?なぎさやゆりはアナタより経験も年も上なんだから、遠慮なく頼りなさい。それに、苦しくなったらいつでも先生たちに助けてって言いなさい。それが一番よ」
「・・・先生・・・ハイ!」
そこでせつなの顔がようやく明るくなった。
まるで憑き物の落ちたような、心配事が消えた晴れやかな笑顔だった。
マミヤもその笑顔をみてホッと一息、安心した。
だが・・・・
それだけで終わるワケには勿論いかない。
「で・も!せつな、今日せつながしたことはイイコト?イケナイコト?どっち?」
と、不意に抱っこ状態から両肩を掴まれてそう聞かれたせつなは、再び笑顔からまた沈んだ顔になってしまった。
先程の顔とはまた違う。恐怖を含んだような半泣きの顔である。
「・・・・悪い・・・コトです・・」
「人の楽屋に勝手に入るのは?」
「・・・・ダメ・・・です」
「人のものを勝手に盗るのは?」
「・・・・ダ・・メ・・」
「未成年なのにタバコを吸うのは?」
「・・・・・・」
「今日のせつなはイイコだったの?悪いコだったの?どっち?」
「わ・・・悪い・・・コ・・・ですぅ・・」
「じゃあプリキュアのルールで、悪いコはどうなるんだったかしら?」
もはやガタガタ震えて答えられないせつなに、マミヤは無情にも膝をポンポンと叩いて促す。それを見て反射的に身が引けるせつな
「せつな、先生のお膝にいらっしゃい」
「あっ・・・い・・イヤ・・ゆるして・・・ヤダぁ・・きゃあっ!?」
しかしグズるせつなを、マミヤは手を引いて強引に膝の上に引き倒した。
そしてそのまま赤のスカートとその下の白に赤の花びらのワンポイントをあしらったパンティも膝あたりまで下ろしてしまい、せつなの引き締まりながらも、色白で柔らかく、まだまだ子どもっぽい可愛いお尻が顔を出した。
「ひいっ・・・いっ・・イヤッ!ヤダヤダっ・・せっ・・せんせぇっ・・マミヤ先生ったらあっ・・イヤですぅっ!エッチぃっ・・」
「エッチじゃありません!悪いコのお尻は丸出しでオシオキされるの!今日はいけないせつなのお尻、先生がうんとぺんぺんしてあげますからね!」
「いやあぁ〜〜〜〜〜っっっ」
わかっていたことだ。
あれだけのコトをしてお仕置き無しで許されるなんてせつなとて考えてはいなかった。
覚悟はしていた。
でも、やっぱりコワイものはコワイし、痛いのはイヤだ。
マミヤ先生の拳法を駆使したお尻ぺんぺんががどれほど痛いのかせつなとてもうすっかり理解しているのだから。
マミヤ先生がせつなの動きを封じてから手にハァ〜〜・・と息を吐きかけるのを感じ取る。
怖さにぎゅっと強く目を閉じたその瞬間、せつなのお尻でマミヤの必殺の平手打ちが破裂した。
パアァァーーーーンッッ!!
「!!・・・っっ・・ひっっっ・・・いぃっ・・」
ぺーーーんっ!!
「いいぃっ・・・きゃああぁぁぁ〜〜〜〜〜〜〜っっっ・・・いっ・・いぃっ・・たあぁぁ〜〜・・・」
お尻のそれぞれ右と左にマミヤの掌撃が叩きつけられる。
破裂音とともに、せつなの真っ白なマシュマロのようなカワイイお尻にくっきりとマミヤの大きな掌の跡が赤々と刻印される。
衝撃の瞬間膝の上でせつなの体が大きく跳ね、あまりの激痛に絶叫が響き渡る。
たった2発でせつなの目からは涙がわっと溢れ出て、ソファの上にタタッと零れ落ちる。
そこからは多少威力は弱めるが一定の力と感覚を持った平手の乱打がせつなのお尻を襲った。
ぱしんっ! ぺしんっ! ぱちぃんっ! ぺちぃんっ! ぱんっ! パンっ! ぺんっ! ペンッ! ペーンっ!
「きゃっっ・・・あっああぁあっ・・やっ・・やあぁぁうぅっ・・きゃううぅっっ・・やんっやん!やあぁぁんっっ・・・いたあぁぁ〜いっっ!せっ・・せんせぇえっ・・マミヤせんせえぇ〜っ・・きゃああぁっっ・・・いぃっ・・いたいっ・・いたいですうぅ」
「お仕置きなんですからね。イタクて当然でしょせつな。ホラ!暴れない!ちゃんとおとなしくなさいっ!」
「むっ・・ムリぃっ!ムリですぅっ!だって・・だってえぇ・・・」
バシィーンッ!
「きゃあぁ〜〜〜んっっ・・・い、いたいんだもおぉんっっ・・ふえぇぇ・・・」
「いくらストレスが溜まってたからって、バットさんのモノを勝手に盗るなんて、ドロボウさんと一緒なのよ!?オトナだったら警察に逮捕されちゃうのよ?万引きと同じよ!どうしてそれがわからないの!?」
「あぁぁ〜〜んっ・・・だって・・・だってえぇ・・」
ぱちぃーんっ! べちぃんっ! バチーンっ! ばちいぃんっ! ぴしいぃーっ! ぺしぃーーっ!
「いいぃっっきゃあぁぁ〜〜っっ・・・ひいぅううっ・・・あんっああぁぁんっっ・・ぎゃんっ!ぎゃあぁぁーーーっっ・・あぎゃあぁぁ〜〜っっ」
「だってじゃ!ありません!おまけにタバコなんて・・アンタはまだ未成年でしょ!?タバコ吸っちゃいけないコトくらい常識でしょ!ルール違反なのよ?法律違反なのよ!?挙句に火の不始末でボヤ騒ぎになりそうな危険もあったのよ!まったく・・アンタって娘は・・悪い娘!悪い娘!悪い娘!」
ばしっ!バシっ! びしっ! ビシッ! パッチンッ! ペッチンッ! びたぁーんっ! ぴしゃんっ!
「あああぁぁっっ・・・いっ・・いたあぁいっ!いたいぃっ!イタイイタイイタイいったあぁぁ〜〜〜いっっ・・・わあぁぁ〜〜んっっ・・うわぁぁ〜〜んっ・・ああぁぁぁ〜〜〜〜んっっ・・・」
「2度とこんなコトが無いように・・・今日はたぁっぷりとこのオシリに躾をし直してあげます!」
ぴしゃっ! ピシャっ! ぴしゃんっ! ピシャンっ! ぱあんっ! ぺんっ! ペンッペンッ!!
「ぎゃあぁぁんっっ・・いぎゃあぁんっ・・いだあぁいっ・・いだいよぉっ・・いだいよおぉっ・・も・・おっ・・オシリぃ・・きゃあぁぁんっっ!・・オシリぃっ・・ムリぃぃ〜〜・・あっきゃあぁ〜〜っっ」
ばしぃんっ! バシィンッ! びしぃっ! ベチィンッ! パンッ! パンっ! ぱぁんっ! ベチィンッ!
「ふっ・・ふええぇぇ〜・・・ぎゃあぁんっ・・ひぎゃあぁんっ・・うえぇぇ〜〜・・お・・しぃりぃ〜〜・・・あっぎゃあぁんっ・・・いぃだあぁ〜〜・・・きゃあぁぁーーーっっ」
ぴしゃっ! ぴしゃっ! ピシャンっ! ぴっしゃんっ! ぴっしゃあぁんっ!
「ぎゃあぁぁんっ・・・ぎゃぴいぃいぃ〜〜〜〜っっ・・・うええっえっえっ・・びええぇぇ〜〜〜んっっ」
もはやせつなの中にあと何回で終わり、あとどれぐらい我慢すれば?
そんな考えなど入り込む余地はなかった。
ただ次から次へと襲ってくる先生の灼熱の激痛を伴う懲らしめの平手を、絶叫とともに受け続けるしかなかった。
お尻は焼き焦がされているかのように熱く、まるで火傷をしているようで、平手が炸裂した瞬間は灼熱の電流が弾けたのかと思うくらいの痛みを伴う。
マミヤも少し手を止めてせつなの様子を伺った。
可愛い顔は涙と脂汗と鼻水でぐしょぐしょ。顔の下のソファもせつなの涙でもはやびっしょりと濡れており、その厳しさを物語っている。
哀れ、マシュマロのようだったせつなの白くて可愛かった桃尻はマミヤの手形が真紅に何層にも折り重なり、2回りは大きく腫れ上がっている。
見るからに痛そうなこのお尻を見てそろそろかとマミヤが助け舟を出す。
「せつな?どう?反省したかしら?」
「えっく・・ひっく・・うえっく・・ひいぃいぃっぐぅ・・」
「せつな?」
「はっ・・えうっ・・ひぐっ・・はんっせぇ・・し・・まし・・た・・・」
「そうね。じゃあ悪いコトしたらなんていうのかしら?」
「ひくっ・・ひくっ・・クスンッ・・ぐしゅっ・・ごっ・・ごめっ・・ゴメン・・・ナサイ・・・」
「そうね。イイコね。でも、今日のせつなはちょっとオイタが過ぎちゃったみたいだから・・・最後にとってもいたぁ〜〜〜いの、行くわよ?」
「ひっ・・ひっ・・ひっひっ・・びぃぃええぇぇ〜〜〜・・・ああぁぁ〜〜〜んっっ・・や、ヤダあっぁ〜〜っ・・も、たたいちゃぁ・・やあぁぁ〜〜〜っっええぇぇ〜〜〜んっっ」
「ダーメ、ホラ、最後よ!」
マミヤはそう言うと呼吸を整え、体に気を集中して必殺技を繰り出した。
「麻美耶聖拳奥義・麻美耶無情猛翔波(まみやせいけんおうぎ・まみやむじょうもうしょうは)!」
説明しよう!麻美耶無情猛翔波とは!?
藤田麻美耶が開発せし、悪いコを懲らしめるための必殺の仕置き拳法の奥義の1つである。
もはや散々に叩いて真っ赤っ赤に腫れ上がらせた悪いコのお尻にさらに非情とも思える力とオーラを纏った平手打ちの乱打を雨霰と降らせるという残忍獰猛な奥義である。
コレを喰らったコはその衝撃の乱射に激痛の絶叫と号泣が止まらなくなり、お仕置きが終わった後もお尻がじんじんヒリヒリと耐え難い灼熱の苦痛を訴え続け、まるで焼けた石炭のような熱を持ち、パンパンに赤々と腫れ上がらせ10日の間は座るたびに耐え難い苦痛を味わい、よぉ〜く反省できるという恐るべき拳である。
「反省なさい!悪いコ悪いコ悪いコ!めっ!めっ!めっ!めっ!めっ!めーーーっ!イイコになあれ!」
ぱあぁぁんっ!
ぺーーんっ!!
ばしっばしっ! びしっ!びしっ! ビビビビビビビビビビビビビビビビビッビッタアァーーンっ!
ぴしゃあぁーーーんっっ!!
「ぴぃぎゃああぁ〜〜〜〜〜んっっ・・ぃいきゃああぁ〜〜〜〜〜んっっ・・ああぁぁあぁ〜〜〜んっ・・ごっ・・ゴメンなさあぁぁ〜〜〜〜〜〜いっっ・・ぅえええぇぇ〜〜〜〜〜んっっ」
「ふえっく・・・ぅえっく・・ひいっひぃぃ・・・ぐすっすんっ・・ぐしゅっ・・くすんっ・・ええぇぇっ・・えっえっ・・」
「よしよし、痛かったわねぇ〜、せつな。よぉく頑張りました。イイコねえ〜」
厳しいお仕置きが終わった後、泣きじゃくるせつなを、マミヤは自分の胸に抱き寄せて髪と、そして散々叩いて真っ赤に腫れて、見るからに痛々しくなってしまったお尻を優しく撫でて上げた。
しばらくは座るのもツライだろう。
「せつな、先生せつなにデートに行って来てって言われて嬉しかったわよ。ありがとう。でも、頑張りすぎてあんまり自分を追い詰めちゃダメ。アナタが無理して体壊しでもしたら先生たちもっと悲しいわよ?それに、どんなに疲れてても人のモノを勝手に盗ったり、タバコ吸ったりなんかは絶対にダメ!それは大きな法律違反だし、タバコはアナタみたいな成長期の若いコには本当に毒でしかないんだから。だから先生今日、お尻厳しくぺんぺんしたのよ?ね?もう2度としないでね、先生とお約束。できるわよね?せつなは本当はとってもイイコなんだから」
「ひぐっ・・えっえっく・・ぐしゅっ・・ハ・・イ・・わかり・・ました。せんせぇ・・せんせえぇ〜・・」
「うん、なあに?」
「ゴメン・・なしゃいぃ・・」
そう言って謝る愛し子を、マミヤはもう1度優しく抱きしめた。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「ラオウ、その手をどけろ」
「どけぬわケンシロウ、うぬのその箸の先にある超限定!柔らか極上霜降りカルビをどうするつもりだ?」
「食べるのだ」
「笑ぉぅ止ぃ!ソコにある超限定!柔らか極上霜降りカルビはこの超限定!柔らか極上霜降りカルビを喰うことの覇王であるこの俺のものだあっ!」
「覇王など関係あるか!ラオウ、私は今日までアナタを超える為に剛の拳をも会得した。今こそココでその奥義を見せてくれよう!」
「トキ兄さんといえど、この乱世に咲いた1枚の肉!むやみに奪わせはしないっ!」
「テメエら揉めるんだったら店から出て外でやれコラアーーーーっっ!!」
人気焼肉店、「焼肉・牙一族」(やきにく・きばいちぞく)。
その店内でPCA21の打ち上げパーティー中、バットの怒声が肉の取り合いで揉めていた北斗三兄弟を貫いた。
あのあと、フィナーレまで大成功で終え、せつなのコトで少し問題は起きかけたが、ユリアの取り成し(脅迫)でシンもこの事を秘密裏に伏せると約束。
そのままユリアの希望でシンと、またせっかくのデートだからとレイも、お金持ち2人の男達によって焼肉パーティーへと発展した。
全国にチェーン店を幅広く展開する食肉メーカー、「牙一族」(きばいちぞく)が経営する人気焼肉店。
プリキュアオールスターズ・トゥエンティーワンのメンバー全員も大興奮でおいしいお料理に舌鼓を打っていた。
「ったく!うるせえったらありゃしねえ!」
「タイヘンねバットくん」
「っとにそうっスよ!オレからしたら嬢ちゃんたちよりアイツラの方がよっぽどメンドウだっての・・・あ、でもレイさんは違いますよ?どうも・・なんかオレまでゴチになっちゃってスンマセン」
頭を掻いて恐縮するバットにレイは「気にするな。大勢の方が楽しいからな」とこともなげに答えてビールをグイっと流し込んだ。
「ちょっとユリアさん!ケンに飲み物持ってくのはアタシがやるから引っ込んでて下さい!」
「何言ってるの?ケンは私の運命の人よ!私に決まってるじゃない!」
「運命の人とか今時流行らないってんのよ!いいから引っ込めってのオバサン!」
「なんですてこのペチャパイガキンチョ!シメルわよ!」
あちらではまたしてもユリアとリンが火花を散らしている。
もう少し仲良くできないものか?とバットは思った。
「その点・・・」
「ラブ〜!ホラ、トリから来たよ〜」
「わーい!待ってましたぁ〜一緒に食べよのぞみちゃん!」
「うんうん!ねえねえうららも一緒にたべよ〜v」
「りんちゃ〜ん、あたしノンアルのカシスオレンジねv」
「りんちゃん、あたしも頼むナリぃ〜、パインソーダ!」
「あたし、ベリーソーダねv」
「・・・なぎささんも、咲ちゃんもえりかも!ドリンクバーくらい自分で行って下さいよ!ったく、なんでアタシが・・店員さんでもないのに・・・」
「あのコたち本当に仲いいっスわ」
「ホントね」
「やっぱり、それもマミヤさんのおかげだったりするんじゃないっスか?」
「もう、やめてよバットくんたら」
バットとマミヤは2人して顔を見合わせて笑った。
「うぬらぁ!それに触れるなあ!その1つ余っている黒部名水ブタさんのガーリックトンテキはこの黒部名水ブタさんのガーリックトンテキを喰うことの覇王であるラオウのものだあぁ!」
「させん!ラオウ!お前が握るのは黒部名水ブタさんではなく死兆星だ!」
「食いものは早い者勝ちなのだ!序列など関係ない!せめて苦しまずに死を迎えさせてやろう」
「クックック、力こそが正義!いい時代になったものだ。今の時代で言えば権力!財力!ならばその肉はそれらすべてを持っているこの俺のものというコトだ」
「オレはアイリのためならば、たとえ泥をすすっても、最後に残ったその黒部名水ブタの肉を喰らっても生き残る!キサマらの出る幕はない!」
『ならば勝負!!』
「北斗剛掌波!」(ほくとごうしょうは)
「北斗飛衛拳!」(ほくとひえいけん)
「北斗有情断迅拳!」(ほくとうじょうだんじんけん)
「南斗獄屠拳!」(なんとごくとけん)
「南斗断己相殺拳!」(なんとだんこそうさいけん)
「だから揉めるんだったら店から出てけテメエらああぁーーーーーっっっ!!!」
と、相も変わらずプリキュア戦士のお嬢様方とは相反する仲の悪い男達に、バットが再び激しく突っ込んだ時だった。
「ハイ、じゃあケンカになるからこの残ったのプリキュアのみんなでジャンケンゲームで食べちゃいますね」
『・・・え?????』
そう言って拳法を繰り出した彼らの合間をぬって皿をひょいと取り上げたのは東せつなであった。
「ハイ、じゃあ食べたい人、ジャンケンで勝った人にしましょう!」
「さんせーさんせーv」 「せつなちゃんやるうぅ〜〜!」
「よくやったせっちゃん!」
「えらいわよ!」
せつなの行動に周りのギャラリーがやんややんやと沸く。
「まて小娘!!それはこの拳王の肉!それを奪おうとはキサマ死を持って償いたいかあ!?」
「このキングに楯突くとは・・・貴様もケンシロウのように胸に七つの傷が欲しいようだなぁ?」
「・・・だって、ケンカになるでしょ?ラオウのおじさまたち前にもほのかセンパイに言われたじゃないですか。今度ケンカしたら、社長さんに行って、出入り禁止にしてもらいますよって、それでもいいんですか?シンさんもレイさんも、ここで騒いだら、マミヤ先生にもユリアさんにも嫌われちゃんますよ?それでもいいんですか?」
「ぐがああぁーーーっっそうだったあぁーーっ!」
「これではまた職がなくなるではないかあぁ〜〜・・WEはSHOCK!!・・・ゴホッゴホッ・・ぐっはああぁっっっ」(トキさん吐血)
「金がなければ肉もつつけん〜〜・・なんというコトだ!この拳王にもまだ涙が残っておったわぁぁ〜〜〜」
「マミヤっ・・・オレは・・お前のタメに生きる・・そう決めたというのに・・それが叶わぬのか!?」
「ユリアあぁ〜〜っっなぜオレを見てくれん!なぜなぜなぜえぇだあぁ〜〜〜っっ」
と、せつなの言った言葉にそれぞれ発狂している北斗、南斗の男達。
せつなは笑顔でマミヤを見やると、マミヤも「えらい!」という顔でうなづいた。
「せつなカッコイイ〜〜♪しあわせ、ゲットだよ!」
「あのオジサンたちまんまとハメられちゃってダッサァ〜・・せつな、カンペキ!」
「せつなちゃんなら、これからもみんなのことまとめてくれるって・・わたし信じてる!」
「うん!せいいっぱいガンバるわ!」
ハピネスの
少女にハメられ
ノンハピネス
今日も、平和な1日でした。
つ づ く